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【慶應義塾大学】2023年度 薬 第1問・第2問 解説

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目次

第1問 銅の周辺と電池

[table id=12 /]

問1 

(1)(2)(3)
$\ce{Cu}$ は第 4 周期 11 族 に属している。慶應大志望者であれば、原子番号 $36$ $\ce{Kr}$ まで覚えておきたいところ。

なお$11$族はオリンピック元素とも呼ばれており、$\ce{Cu, Ag, Au}$ (メダルの色)が属する。オリンピックでは 1 位を取りたい! → ”1″ “1” 族と無理やり結びつけても良いかもしれない。

(4)
各極のイオン反応式は次の通り。

負極 $\ce{Zn -> Zn^{2+} + 2e-}$
正極 $\ce{Cu^{2+} + 2e- -> Cu }$

連立して電子を消去すると、

$\ce{Zn + Cu^{2+} -> Zn^{2+} + Cu}$

$\ce{Zn}\ \pu{1 mol}$ から $\ce{Cu}\ \pu{1 mol}$ が生成するから、

$\dfrac{\pu{0.530 g}}{\pu{65.4 g/mol}}\times\pu{63.5 g/mol}$

$=\pu{0.514\cdots g}$

(答)$\boldsymbol{\pu{5.1E{-1} g}}$

問2


$\ce{Cu}$ の炎色反応の色は 青緑 色である。
(同じ緑色系統でも、$\ce{Ba}$ の炎色反応は黄緑色である。緑と答えないほうが良いだろう。)


ある金属から不純物を除去して純度を高める操作を精錬という。(製錬は、鉱物から金属を取り出す操作のこと。)特に、電気分解を利用した製錬を電解精錬という。銅はこの電解精錬を利用して高純度の銅を得ている。


電池の両極間の電位差の最大値を、起電力という。


希硫酸に亜鉛板と銅板を浸して作られた電池はボルタ電池と呼ばれる。


硫酸亜鉛水溶液と硫酸銅(II)水溶液にそれぞれ亜鉛板と銅板を浸し、溶液を素焼き板で仕切った電池はダニエル電池と呼ばれる。

問3

酸化銅(I) は、$\ce{Cu^+}$ と $\ce{O^{2-}}$ からなる化合物。化学式は $\ce{Cu2O}$。フェーリング反応でも登場するので、色であることも大丈夫であろう。

問4

濃硫酸は溶解熱の値が大きいため、濃硫酸に水を入れてしまうと、濃硫酸の表面で突沸がおきて危険である。したがってガラス棒を用いて水に濃硫酸をゆっくり加える必要がある。冷却しながら操作するとなお良い。

問5

1 
$\ce{CuSO4 + 2NaOH -> Cu(OH)2 v + Na2SO4 }$ の反応が起こる。

2 
少量のアンモニアであるから錯イオンは生じないと考える。

$\ce{CuSO4 + 2NH3 + 2H2O -> Cu(OH)2 v + (NH4)2SO4}$

水酸化銅(II) は熱に対してやや不安定で、分解反応が起こる。
$\ce{Cu(OH)2 -> CuO v + H2O}$


3 
$\ce{Cu^{2+}}$ は、液性条件に関係なく $\ce{S^{2-}}$ と沈殿する。
$\ce{CuSO4 + H2S -> CuS v + H2SO4}$

問6

$\ce{Cu^{2+}}$ を含む水溶液に過剰のアンモニア水を加えると錯イオン $\ce{[Cu(NH3)4]^{2+}}$ が生じる。

問7

銅の電解精錬において、粗銅板中に銅よりイオン化傾向が小さい金属が入っている場合、その金属は操作終了時に極板の下に陽極泥として沈殿する。

本問の粗銅板には、金・鉄・ニッケル・鉛が含まれているので、銅よりイオン化傾向が小さいが陽極泥に含まれる。

また、電解液には硫酸酸性の $\ce{CuSO4}$ 水溶液を用いているため、鉛が $\ce{Pb^{2+}}$ として溶出したのち、すぐに $\ce{SO4^{2-}}$ と沈殿をつくる。そのため、陽極泥には硫酸鉛(II)も含まれる。なお、答えるときは化学式とあるので注意すること。

問8

起電力は、イオン化傾向の差が大きいほど高くなる傾向にある。

$\ce{Li K Ca Na Mg Al Zn \bold{Fe Ni Sn} Pb H \bold{Cu} Hg Ag Pt Au}$

したがって選択肢の半電池のうち、鉄と銅の半電池で電池を形成すれば、最も起電力が高くなる。

問9


ダニエル電池の正極では、$\ce{Cu^{2+} + 2e- -> Cu}$ の反応が進むので、硫酸銅(II) 水溶液の濃度は濃いほど電気を流す時間が長くなる。 → 正


負極では、$\ce{Zn -> Zn^{2+} + 2e-}$ の反応が進むので、硫酸亜鉛水溶液の濃度は薄いほど電気を流す時間が長くなる。 → 誤

3~5
素焼き板を変更した場合、電気を流す時間が短くなることはあるが、より長くなることは無い。 → 全て誤

第2問 ピストンに封入された気体

[table id=13 /]

問1

全圧が $\pu{2.0E5 Pa}$ と分かっているので、全気体で気体の状態方程式を立てる。

$V_1 = \dfrac{\pu{(2.0+0.80) mol}\times(8.31\times10^3 ) \times \pu{300 K}}{\pu{2.0E5 Pa}}$

$=34.902 \cdots$

(答) $\boldsymbol{\pu{3.5E1 L}}$



問2

操作2では完全燃焼させたとあるので、水素と酸素のいずれかが無くなるまで燃焼がおこると考える。よって、$\pu{0.80 mol}$ の $\ce{O2}$ が無くなり、$\ce{H2}$ が $\pu{2.00-0.80\times2 = 0.40 mol}$ 生成している。

(答)$\boldsymbol{\pu{4.0E{-1} mol}}$

ここで、問1の全気体と問2の $\ce{H2}$ について、それぞれ気体の状態方程式を並べると、

問1の全気体
$(2.0\times10^5)\times34.9=2.8\times R \times300 \ \cdots\cdots$ ①

問2の水素
$P_\ce{H2} \times 34.9 = 0.40\times R \times 360 \ \cdots\cdots$ ②

(もちろんこの②式を直接計算しても良いが、計算を簡潔にするため・・・)

② ÷ ① を辺々で実行して、

$\dfrac{P_{\ce{H2}}}{2.0\times10^5}=\dfrac{0.40\times360}{2.8\times300}$

$P_{\ce{H2}}=3.42\times10^4$

(答)$\boldsymbol{\pu{3.4E4 Pa}}$


このとき仮に全ての $\ce{H2O}$ が気体になっているとすると、圧力を $P’$ とおいて

$P’ \times 34.9 = 1.60 \times R \times 360 \ \cdots\cdots$ ③

③ ÷ ② を辺々で実行して、

$\dfrac{P’}{3.42\times10^4}=\dfrac{1.60}{0.40}$

$P’ = 13.68\times10^4 > 6.3\times10^4$ ($\pu{87 ℃}$における飽和蒸気圧)

気体の圧力が飽和蒸気圧を超えることはないので矛盾。超えた圧力に相当する水蒸気が液化している。

(方針1)

仮に全て気体とした状態から液化する水蒸気の分について気体の状態方程式を立てると、
その物質量を $n_l$ とおいて、

$(13.68-6.3)\times10^4 \times 34.9 = n_l \times R \times 360 \ \cdots\cdots$ ④

($13.68$は切り捨てて $13.6$ として計算。)

④ ÷ ③ を辺々実行して、

$\dfrac{7.3\times10^4}{13.6\times10^4}=\dfrac{n_l}{1.60}$

$n_l = 0.858 \cdots$

(答)$\boldsymbol{\pu{8.6E{-1} mol}}$

(方針2)

水蒸気として存在する水の物質量を $n_g$ とおくと、

$6.3\times10^4 \times 34.9 = n_g \times 8.31\times10^3 \times 360$

$n_g = \dfrac{6.3\times10^4 \times 34.9}{8.31\times10^3\times360}=0.734 \cdots$

よって液化している水の物質量は、

$1.60-0.734=0.866$

(答) $\boldsymbol{\pu{8.7E{-1} mol}}$

問3


液体内部の気泡中に存在する蒸気の圧力が、外圧と等しくなると沸騰が開始する。

すばやく体積を増加させたため、外圧(=気体の $\ce{H2O}$ と $\ce{H2}$ の圧力の合計)が急に小さくなる。もちろん水蒸気圧(=温度一定のとき一定値をとる。)も減少しているから、水蒸気圧を元に戻すため、液体の水の蒸発が盛んになる。

問題文中には「沸騰した」とあるので、水蒸気圧のみ言及するのではなく、外圧で答えた方が良いだろう。

(答) 体積の増加により、容器内の気体の全圧が水の蒸気圧を下回ったため。



(答) 水蒸気の増加により、容器内の気体の全圧が水の蒸気圧を上回ったため。

問4

$\ce{H2O}$ について気体の状態方程式より

$6.3\times 10^4 \times V_3 = 1.6\times R \times 360 \ \cdots\cdots$ ⑤

⑤ ÷ ③ を辺々実行して(③の$\pu{34.9 L}$ は $V_1$ とおいた。)

$\dfrac{6.3\times10^4 \times V_3}{2.0\times10^5 \times V_1} = \dfrac{1.6\times R \times 360}{2.8\times R \times 300}$

$\dfrac{V_3}{V_1}=2.176 \cdots $

(答)$V_3 = \boldsymbol{2.2\times10^0} \ V_1$

問5

$V_2$ → $V_3$ にかけては液体の水が存在する。温度が一定なので、この間の水蒸気圧は飽和蒸気圧の値で一定であり、水素の分圧は反比例的に減少する。

($PV=nRT$で $n, R, T$ が一定なので、$nRT=k$ とおくと$PV=k$ より $P=\dfrac{k}{V}$)

ゆえに全圧も反比例的に減少する。(☆)


$V_3$ よりも大きい体積になると液体の水は全て水蒸気になっているため、全圧はやはり反比例的に減少する。(☆☆)

(☆)(☆☆)について、それぞれの気体の物質量が異なるため、それぞれの反比例のグラフの形状は異なる。

(答)5

問6

液体の水に、不揮発性である塩化ナトリウムが溶解すると、蒸気圧降下がおこる。そのため実験2の操作2における水蒸気圧は、実験1の操作2における水蒸気圧よりも低くなる。したがって、$P_3 < P_1$ となる。

(答)
1) 3
2) 水中に塩化ナトリウムが存在することで蒸気圧降下が起こったため。

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