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【北海道大学】2022年度 化学 第3問 過去問解説

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第3問 | 概評と答え

有機化学と高分子化学からの出題。

I はアニリンを中心とした問題です。問2から問6までは典型問題なので落としたくないです。
問1は、やや答えにくいかもしれません。
問6の後半は解熱鎮痛剤がアセトアミノフェンのことを指すと気づいた上で、構造式を知っていないと(少なくとも「パラ」の位置にあることを知っていないと)解けない問題なので、正答率は低かったでしょう。

II は多糖を中心とした問題。全体的に知識問題がキツいです。問1から問3を確実に拾いたいです。
問6の計算問題は類題を解いたことが無ければ厳しいかもしれません。

第3問は時間が間に合っていれば$\,6\,$割程度の正答率を目指したいです。

I
問1(ア) 水酸化ナトリウム   (イ) 塩酸
問2$\pu{0.86 mL}$
問3
問4
問5(え)
問6(ウ) パラ   (エ) オルト   (オ) $3$   (カ) アンモニア   (キ) ヒドロキシ基
II
問1(ク) $1,4-$グリコシド   (ケ) $1,6-$グリコシド
問2$\rm{E}:$ (き)   $\rm{G}:$ (こ)
問3$5$
問4$4$ ・ (に),   $5$ ・ (そ)
問5(は)
問6$26$

I アニリンに関する総合問題

問1 ・ 問3 ・ 問4

実験2では、ニトロベンゼンにスズと塩酸を加えています。
この地点では溶液は塩酸によって酸性になっているので、生成したアニリンはアニリン塩酸塩となっています。

このあとアニリンにするためには弱塩基の遊離を起こすために強塩基を加える必要があります。
したがって (ア) 水酸化ナトリウムが適切です。

実験3では時計皿にできたアニリンに無水酢酸を加えているので、白色固体 $\rm{A}$ はアセトアニリドです。

実験5でこのアセトアニリドをある溶液中で加熱したところ、アニリン塩酸塩 ( 下線部 ii に含まれる有機化合物と同じもの )が生成したことが分かっています。
アミド結合が含まれているので起きる反応は加水分解の一種だろうと考えられます。酸の場合は「加水分解」、塩基の場合は「けん化」が起こります。

アニリン塩酸塩が生じるためには、 (イ) 塩酸で実験する必要があります。
けん化をすると生成物がアニリンとなるため、問題文の条件に合いません。

問2

ベンゼン$\,\pu{1 \tume mol}\,$からニトロベンゼン$\,\pu{1 \tume mol}\,$が生成します。
必要なベンゼンの体積を$\,x\,\pu{[cm^3]}\,$ とおくと、
(ベンゼンの$\,\pu{mol}\,$) = (ニトロベンゼンの$\,\pu{mol}\,$) で式が立てられます。
$$\begin{align}
\f{\pu{0.88\tume g/cm^3} \times x\,\pu{[cm^3]}}{\pu{78\tume g/mol}} &= \f{\pu{1.20\tume g/cm^3} \times \pu{1\tume cm^3}}{\pu{123\tume g/mol}} \\
\\
x &= 0.864
\end{align}$$
有効数字$\,2\,$桁として、$\bold{\pu{0.86\tume mL}}$ が答えです。

問5

実験2で最終的に得られた物質はアニリンです。

実験4では、そのアニリンにさらし粉水溶液を加えています。これはアニリンの検出反応で ( え )赤紫色を呈します。

問6

フェノールを混酸に加えて十分に反応させると、2, 4, 6 – トリニトロフェノールが生成することは知っておくべき知識です。このときニトロ基はオルト位やパラ位の計 (オ) $\,\bold{3}\,$ヶ所に導入されています。
次に希硝酸と短時間で反応させたところ、ニトロ基を1つだけもつ、化合物 $\rm{C}$ と $\rm{D}$ が得られています。

この$\rm{D}$ をスズと濃塩酸で反応させるとニトロ基$\,\ce{-NO2}\,$がアミノ基$\,\ce{-NH2}\,$ に変化します。ただし、酸性溶液中なのでアミノ基は$\,\ce{-NH3+}\,$になっています。この後「中和」とあるのでフェノールの酸に対して塩基を加えればよいと分かります。この後無水酢酸を反応させることを考えれば、$\,\ce{-NH3+}\,$は$\,\ce{-NH2}\,$に戻しておきたいです。したがって加える塩基は弱塩基の遊離ができる強塩基であればよく、(カ) 水酸化ナトリウム水溶液が適切だと分かります。

無水酢酸でアセチル化した後、解熱鎮痛剤と同一の化合物ができたとあります。真っ先に思いつくのはアセチルサリチル酸ですが、今回の実験ではカルボキシ基 $\,\ce{-COOH}\,$ は生成しません。アセトアミノフェンが思い浮かべればこの後が分かります。すなわち、(ウ) パラ位に (キ) ヒドロキシ基が結合しており、このことから$\rm{D}$がパラ、$\rm{C}$ が (エ)オルト – ニトロフェノールであることが分かります。

II. 多糖やその反応

問1 ・ 問2

多数の$\a -$ グルコースが多数結合したものはデンプン。そのうち、(ク) $\a – \bold{1,4 -} $グリコシド結合で直鎖状に連結した分子がアミロース ( 化合物 $\rm{E}$ ; 構造は (き) ) 。それに加えて、(ケ) $\a – \bold{1,6 -} $グリコシド結合 で縮合した枝分かれ構造をもつものがアミロペクチン ( 化合物 $\rm{F}$ )。
化合物 $\rm{H}$ は $\rm{F}$ 同様枝分かれをもち、また動物由来の多糖とあるのでグリコーゲンと推測できます。
(グリコーゲンは動物デンプンとも呼ばれています。)

多数の$\b -$ グルコースが多数結合したものはセルロース。$\b – \bold{1,4 -} $グリコシド結合で直鎖状に連結した分子です。( 化合物 $\rm{G}$ ; 構造は (こ) )

問3

下の図のように、環を構成する$\,\bold{5}\,$つの炭素は全て不斉炭素原子です。

問4

$\rm{E}$ : アミロース、$\rm{F}$ : アミロペクチン、 $\rm{G}$ : セルロース、 $\rm{H}$ : グリコーゲン

(実験1) 温水に対して、アミロースは可溶でセルロースは不溶または難溶です。(正文)

(実験2) 冷水に対して、グリコーゲンは可溶でアミロペクチンは不溶または難溶です。(正文)

(実験3) ジャガイモ中のデンプンがヨウ素デンプン反応を起こし、青紫色を示します。ヨウ素デンプン反応はヨウ素がデンプンのらせん構造に入り込むことで生じますが、この反応は可逆反応でらせん構造に入り込む方向が発熱反応です。よって、加熱すると逆反応が生じてヨウ素がらせん構造から抜けることで、色が消失します。(正文)

(実験4) 実験3の解説で一部述べました。(に)加熱するとヨウ素デンプン反応の色は消失し、冷却すると呈色します。(誤文)

(実験5) アサリを用いているので考える多糖はグリコーゲンとしてよいでしょう。グリコーゲンのヨウ素デンプン反応では (そ)赤褐色に呈色し、加熱すると上記同様色は消失します。(誤文)

問5

「酒石酸ナトリウム」からフェーリング液が類推できたかが正当できるかどうかの分かれ目。(難しい…)
ゆえに硫酸銅(II)を加えて、赤色の沈殿を確かめればよいです。

問6

$\rm{J}$, $\rm{K}$, $\rm{L}$ の個数比 = $\,\pu{mol}\,$比は
$$\begin{align}
\rm{J} : \rm{K} : \rm{L} &= \f{\pu{6.39 g}}{\pu{222 g/mol}} : \f{\pu{0.28 g}}{\pu{236 g/mol}} : \f{\pu{0.25 g}}{\pu{208 g/mol}} \\
\\
&=0.0287 : \pu{1.18E-3} : \pu{1.20E-3}\\
\\
&= 24 : 1 : 1
\end{align}$$

枝分かれしていたグルコースは、$6\,$位の炭素の$\,\ce{-OH}\,$が結合に使われていたのでメチル化されてないはずです。
したがって枝分かれ構造をもつグルコースは$\,\rm{L}\,$です。このことから$\,\bold{26}\,$分子に$\,1\,$つの割合で枝分かれしていたことが分かります。

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