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【北海道大学】2022年度 化学 第1問 過去問解説

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目次

第1問 | 概評と答え

主に理論化学からの出題です。

硫酸の電子式を 2 通り答える問題だけ少し発展内容ではありますが、難関大志望者はオキソ酸の電子式は対策できているはずなので大丈夫でしょう。

第1問で 8 割 〜 完答を目指したいです。

【 I 】硫黄・酸素

問1 硫黄・酸素の総合問題

(1)
酸素の原子番号は$\,8\,$なので、電子配置は
$\,\rm{K}\,(2)\,\rm{L}\,(6)$
よって最外殻電子は (ア)$\,\rm{\bold{L}}\,$殻にあり価電子の数 (貴ガス以外は最外殻電子数に等しい) は (イ)$\,\bold{6}\,$個です。

また硫黄の原子番号は $16$ なので、電子配置は
$\,\rm{K}\,(2)\,\rm{L}\,(8)\,\rm{6}$
よって最外殻電子は (ウ)$\,\rm{\bold{M}}\,$殻にあり価電子の数は同じく$\,6\,$個です。

硫黄原子は様々な酸化数をとり、例えば$\,\ce{SO2}\,$の$\,\ce{S}\,$は$\,+4\,$、$\,\ce{H2SO4}\,$の$\,\ce{S}\,$は (エ)$\,\bold{+6}\,$です。酸化数が正の値をとるときは必ず正の符号 + を付けます。省略できないので注意しましょう。

(2)
$\,\ce{H2O}\,$の非共有電子対の組の数は$\,2\,$組です。以下に選択肢の非共有電子対の組の数を示します。

(あ) $2$組 (い) $4$組 (う) $4$組 (え) $0$組 (お) $2$組 

(3)
$\,\ce{H2SO4}\,$はオキソ酸です。$\,\ce{H-O\bond{-}}\,$の部分構造を$\,2\,$つ持っていることから$\,\ce{S}\,$の不対電子と$\,2\,$つの$\,\ce{H-O\bond{-}}\,$で共有結合ができます。残りの$\,2\,$つの$\,\ce{O}\,$原子は配位結合させれば良いです。これで$\,(\rm{B})\,$の電子式が書けます。

$\,(\rm{A})\,$の電子式は問題文中の「硫黄原子のまわりに$\,12\,$個の価電子がある」・「酸素原子の原子価(=手の数)が$\,2\,$」を手掛かりに考えます。
$\,(\rm{B})\,$にある$\,2\,$つの$\,\ce{O}\,$原子の非共有電子対を、それぞれ$\,1\,$組だけ$\,\ce{S}\,$原子との共有結合に移動させて二重結合にすればOKです。

(4)
電子対反発則です。
中心元素に電子対が$\,4\,$組あるので正四面体構造だと予測できます。その電子対は全て酸素原子と共有しているため、適切な選択肢として (け) が選べます。

問2 水の沸点・水素結合

(1)
分子間力とは、水素結合やファンデルワールス力などを総称した呼び方です。

(2)
沸点の大小は、同形の分子で比べるのであれば分子間力の強さで決められます。
分子間力の大きさは、水素結合 >> ファンデルワールス力 です。

水素結合は$\,\ce{F, O, N }\,$の元素で作られるため、$\,\ce{HF, H2O, NH3}\,$の各分子間は水素結合を形成し沸点が高くなります。

ファンデルワールス力は同形の分子であれば分子量が大きくなるほど強くなるので、題意を満たすには$\,\bold{\ce{HF, H2O, NH3}}\,$以外で分子量が最小の物質(水素化合物とあるので水素をつけるのを忘れない)を答えれば良いです。

$\,14\,$族は原子番号が小さい順に、
( $\ce{C, Si, Ge, Sn, Pb }$ )
よって$\,\ce{CH4}\,$が該当します。

$\,15\,$族は原子番号が小さい順に、
( $\ce{N, P, As, Sb, Bi }$ )
$\,\ce{NH3}\,$を除くことに注意して、$\,\ce{PH3}\,$が該当します。
なお$\,\ce{P}\,$に$\,\ce{H}\,$を結合させたときの化学式が分からないのであれば、同族である$\,\ce{N}\,$原子の$\,\ce{NH3}\,$を参考にして作れば OK です。

$\,16\,$族は原子番号が小さい順に、
( $\ce{O, S, Se, Te, Po }$ )
$\,\ce{H2O}\,$を除くことに注意して、$\,\ce{H2S}\,$が該当します。

ともけむ

それぞれの族で同族原子を$\,5\,$つ並べましたが、なるべく原子番号が小さいものを考えるので最初の$\,2\,$つが分かれば十分です!

(3)
水素結合$\,1\,$本を切るのに、$\,\pu{4.0E-20 J}\,$が必要と問題文にあります。水素結合の本数が分かれば、先ほどの熱量に本数を掛け算するだけです。

さらに ( 親切なことに!)「水分子$\,M\,$個の中には合計$\,M \times \f{A}{2}\,$個の水素結合がある」と問題文中に書かれています。この$\,M\,$と$\,A\,$の値を突き詰めれば良さそうです。

■ $M$ について

$ M = \f{\pu{0.90 g/cm^3} \times \pu{1.0 cm^3}}{\pu{18 g/mol}} \times \pu{6.0E23 /mol} = \pu{0.30E23}$

■ $A$ について
$\,1\,$分子の水に関して 酸素原子の非共有電子対$\,2\,$組で水素結合$\,2\,$本、水素原子$\,2\,$つで他の水分子と水素結合$\,2\,$本できるので、$\,A = 4\,$と分かります。

したがって、求める値は次のように計算できます。

$$\begin{align}
\pu{4.0E-20 J} \times ( M \times \f{A}{2} ) &= \pu{4.0E-20 J} \times ( \pu{0.30E23} \times \f{4}{2} )
\\
&= \pu{2.4E3 J}
\\
&= \pu{2.4 kJ}
\end{align}$$

【 II 】 気体と溶液

問1 ヘンリーの法則

先にヘンリーの法則の記事の定積ヘンリーの項目を見ると分かりやすいです。

(1)
溶解度の小さい気体が水に溶解する物質量はかけている圧力に比例する、という法則をヘンリーの法則といいます。

(2)
定積容器 (体積が変わらない容器)を用いたヘンリーの法則に関する問題は、

  • 気相部分は、状態方程式$\,PV = nRT\,$を用いる。
  • 液相部分は、ヘンリーの法則を用いる。
  • 気相部分と液相部分の気体粒子の$\,\pu{mol}\,$の合計は初めに入れた$\,\pu{mol}\,$に等しいことを利用して方程式を立てる。

この流れで解いていきます。

■ 気相部分について
$$ \begin{align}
PV &= nRT
\\
\\
p \times 0.1 &= x \times \pu{8.3E3} \times 293
\\
\\
x &= \f{0.10}{\pu{8.3E3} \times 293 } \times p
\\
\\
&\fallingdotseq \f{1}{2430} \times 10^{-4} \times p
\\
\\
&\fallingdotseq \pu{4.11E-8} \times p
\end{align}$$
よって (A) は $\bold{\pu{4.1E-8}}$

■ 気相部分について
ヘンリーの法則より、
$$ \begin{align}
y &= \pu{7.1E-4} \times \f{p}{\pu{1.01E5}} \times \f{600}{1000}
\\
\\
&\fallingdotseq \pu{42.1E-10} \times p
\end{align}$$
よって (B) は $\bold{\pu{4.2E-9}}$

■ 窒素の全 $\pu{mol}$ について方程式を立てる。

$$ \begin{align}
\pu{4.11E-8}p + \pu{4.21E-9}p &= 0.013
\\
\\
\pu{4.53E-8}p &= 0.013
\\
\\
p &= \pu{2.86E5}
\end{align}$$
したがって (C) は $\bold{\pu{2.9E5}}$

(3)
ヘンリーの法則が成り立たない気体は、水に溶けやすい気体です。

選択肢内で水によく溶ける気体は、(し) 塩化水素、(そ)アンモニアです。

問2 浸透圧

何を聞かれているのか確認して、問題を解く道筋を立てておこう。

放置後に$\,\rm{A}\,$の液面が$\,\rm{B}\,$よりも高くなる。
 → 水が$\,\rm{B}\,$側から$\,\rm{A}\,$側に移動している。
 → 放置、$\,\color{red}{\rm{\bold{{B}}}}\,$の方が濃度が薄かった ($\,\rm{A}\,$が濃い ) ことが分かる。

左右の液面差が最大になる。
 → 液面差は浸透圧に比例する。
 → ファントホッフの式$\,\Pi = CRT\,$より濃度差が最大になれば良い。

水溶液$\,\rm{A}\,$も水溶液$\,\rm{B}\,$のいずれの選択肢も、体積は全て$\,\pu{500mL}\,$としているので、濃度を比較することは物質量$\,\pu{mol}\,$を比較することと同じです。
浸透圧を考えるとき、電離後の全物質量$\,\pu{mol}\,$で考えることに注意しましょう。

水溶液$\,\rm{A}\,$:
  $\ce{NaCl -> Na+ + Cl-}$ と電離するので粒子数は$\,2\,$倍。
  $\f{\pu{0.059 g}}{\pu{59 g/mol}} \times 2 = \pu{0.002 mol}$

水溶液$\,\rm{B}\,$:
(a) $\ce{CaCl2 -> Ca^{2+} + 2Cl-}$ と電離するので粒子数は$\,3\,$倍。
  $\f{\pu{0.111 g}}{\pu{111 g/mol}} \times 3 = \pu{0.003 mol}$


(b) $\ce{KCl -> K+ + Cl-}$ と電離するので粒子数は$\,2\,$倍。
  $\f{\pu{0.150 g}}{\pu{75 g/mol}} \times 2 = \pu{0.004 mol}$

(c) スクロースは電離しない。
  $\f{\pu{0.171 g}}{\pu{342 g/mol}} = \pu{0.0005 mol}$

(d) グルコースは電離しない。
   $\f{\pu{0.180 g}}{\pu{180 g/mol}} = \pu{0.001 mol}$

以上より、水溶液$\,\rm{A}\,$より物質量が小さく、より差が離れている選択肢は (c) です。

問3 物質の溶解と溶液の性質

(た) 希薄溶液の蒸気圧は、純溶媒に比べて低くなります (蒸気圧降下) 。その結果希薄溶液の沸点は高くなります。

(つ) 過冷却状態が生じたあと凝固が始まると温度は一時的に上昇し、それ以降も冷却を続けていくと、温度はすべてが凝固するまで下がっていきます。これは溶媒が固体となることで液相の質量モル濃度が上昇し、凝固点降下度が下がっていくためです。

(と) 水酸化鉄 (III) のコロイド粒子を含む溶液に少量の電解質を加えて沈殿を起こす操作を、凝析といいます。多量の電解質を加えて沈殿を起こす操作が塩析です。

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