- 不飽和度の公式は覚えたけれど、問題で使えるか不安。
- 構造決定の最初の一歩でつまずきたくない。
この記事では不飽和度の計算問題を基礎から難関大レベルまで10問用意しました。予備校講師歴15年の筆者が、答えだけでなく「どこに着眼するか」まで解説します。
公式の意味や導出から確認したい人は、先に不飽和度の公式と計算方法(解説編)を読んでください。
不飽和度の公式まとめ(これだけで解ける)
分子式 $\ce{C_{x}H_{y}O_{z}N_{w}}$ の不飽和度 $U$ は、
$$U=\dfrac{(2x+2+w)-y}{2}$$
- $\ce{O}$ は無視する(数に入れない)
- $\ce{N}$ は $\ce{H}$ の最大数を 1個増やす($+w$)
- ハロゲン($\ce{Cl, Br}$ など)は $\ce{H}$ とみなして $y$ に加える
| $U$ の値 | 分かること |
|---|---|
| $0$ | 単結合のみ・環なし |
| $1$ | 二重結合1つ または 環1つ |
| $2$ | 上の組合せ×2(三重結合1つを含む) |
| $4$以上 | ベンゼン環1つの可能性が高い($\ce{C=C}\times3$+環1つ) |
レベル1|公式に代入する基礎問題
問1
分子式 $\ce{C4H10}$ の化合物の不飽和度を求め、構造について分かることを述べよ。
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【着眼点】炭化水素なので $U=\dfrac{(2x+2)-y}{2}$ に代入するだけ。
$$U=\dfrac{(2\times4+2)-10}{2}=0$$
答え: $U=0$。 二重結合も環もない飽和鎖式炭化水素(アルカン)。ブタンと2-メチルプロパンの2種が考えられる。
【つまずきポイント】$U=0$ は「情報ゼロ」ではない。「枝分かれだけ考えればよい」と探索範囲を絞れたことが収穫。
問2
分子式 $\ce{C6H6}$ の化合物の不飽和度を求めよ。
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$$U=\dfrac{(2\times6+2)-6}{2}=4$$
答え: $U=4$。 ベンゼンが代表例。$U=4$ を見たら「ベンゼン環で4を消費」をまず疑う。
【つまずきポイント】$U=4$=ベンゼン環と断定はできない(例: 三重結合2つ+二重結合1つ…等の鎖状分子もあり得る)。問題文の「芳香族」の一言を必ず探すこと。
レベル2|O原子を含む分子式
問3
分子式 $\ce{C3H6O}$ の化合物の不飽和度を求め、考えられる構造の特徴を2つ挙げよ。
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【着眼点】$\ce{O}$ は数に入れない。
$$U=\dfrac{(2\times3+2)-6}{2}=1$$
答え: $U=1$。 ①$\ce{C=O}$ を1つもつ(アセトン、プロピオンアルデヒド)、②$\ce{C=C}$ を1つもつ(アリルアルコールなど)、または環1つ(プロピレンオキシドなど)。
【つまずきポイント】$U=1$ かつ $\ce{O}$ ありでも $\ce{C=O}$ とは限らない。二重結合が $\ce{C=C}$ 側にある可能性を消さないこと。
問4
分子式 $\ce{C5H10}$ の炭化水素について、不飽和度を求め、どのような化合物があり得るか述べよ。
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$$U=\dfrac{(2\times5+2)-10}{2}=1$$
答え: $U=1$。 二重結合1つの鎖状アルケン(1-ペンテンなど)か、環1つのシクロアルカン(シクロペンタン、メチルシクロブタンなど)。
【つまずきポイント】アルケンだけ書いて環状を忘れるのが定番ミス。$U=1$=「二重結合または環」と唱えること。
レベル3|N原子を含む分子式
問5
分子式 $\ce{C2H7N}$ の化合物の不飽和度を求め、構造を推定せよ。
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【着眼点】$\ce{N}$ があるので $+w$ を忘れない。
$$U=\dfrac{(2\times2+2+1)-7}{2}=0$$
答え: $U=0$。 飽和・環なしのアミン。エチルアミン $\ce{CH3CH2NH2}$ とジメチルアミン $\ce{CH3NHCH3}$ の2種。
【つまずきポイント】$+w$ を引いてしまう符号ミスが最多。「$\ce{N}$ が入ると $\ce{H}$ の席が1つ増える」という理屈で覚える。
問6
分子式 $\ce{C3H7NO2}$ のアミノ酸の不飽和度を求め、$U$ が何に使われているか答えよ。
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$$U=\dfrac{(2\times3+2+1)-7}{2}=1$$
答え: $U=1$。 カルボキシ基 $\ce{-COOH}$ の $\ce{C=O}$ に使われている(この化合物はアラニン)。
【つまずきポイント】$\ce{O}$ は無視、$\ce{N}$ は$+1$。両方が入った式で処理が混ざらないように、代入前に $x, y, z, w$ を書き出す習慣をつける。
レベル4|構造決定への応用(エステル)
問7
分子式 $\ce{C4H8O2}$ のエステルは何種類あるか。不飽和度を利用して考えよ。
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【着眼点】まず $U$ を出し、エステル結合 $\ce{-COO-}$ の $\ce{C=O}$ で消費させる。
$$U=\dfrac{(2\times4+2)-8}{2}=1$$
$U=1$ はエステルの $\ce{C=O}$ で使い切るので、残りの骨格はすべて単結合・環なしと確定。あとは $\ce{R-COO-R’}$ の炭素の配り方を数える。
| 酸 | アルコール | エステル |
|---|---|---|
| ギ酸 | 1-プロパノール | ギ酸プロピル |
| ギ酸 | 2-プロパノール | ギ酸イソプロピル |
| 酢酸 | エタノール | 酢酸エチル |
| プロピオン酸 | メタノール | プロピオン酸メチル |
答え: 4種類。
なお、ラクトン(環状エステル)は環1つ+$\ce{C=O}$ 1つで $U=2$ が必要なため、$U=1$ の時点で候補から自動的に除外できる。
【つまずきポイント】「$U=1$ を $\ce{C=O}$ で使い切った=これ以上、二重結合や環を考えなくてよい」という探索打ち切りの根拠として使えるのが不飽和度の真価。
問8
分子式 $\ce{C8H8O2}$ で表される芳香族エステルAを加水分解すると、芳香族カルボン酸Bとメタノールが得られた。A、Bの構造を推定せよ。
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$$U=\dfrac{(2\times8+2)-8}{2}=5$$
【着眼点】$U=5$=ベンゼン環(4)+エステルの $\ce{C=O}$(1) でちょうど使い切り。側鎖はすべて飽和と確定。加水分解でメタノールが出るので $\ce{R-COO-CH3}$ 型。
答え: Aは安息香酸メチル $\ce{C6H5COOCH3}$、Bは安息香酸 $\ce{C6H5COOH}$。
【つまずきポイント】$U=5$ を見た瞬間に「ベンゼン環+$\ce{C=O}$」と仮説を立てられるかが勝負。芳香族の構造決定では $U-4$ が「ベンゼン環以外に使える残り」になる。
レベル5|実践レベル(元素分析との融合)
問9
化合物Xの元素分析値は質量パーセントで炭素54.5%、水素9.1%、酸素36.4%であり、分子量は88である。Xの分子式と不飽和度を求めよ。
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【着眼点】元素分析→組成式→分子式→不飽和度の一本道。
各元素の物質量比:
$$\ce{C}:\ce{H}:\ce{O}=\dfrac{54.5}{12}:\dfrac{9.1}{1.0}:\dfrac{36.4}{16}=4.54:9.1:2.28=2:4:1$$
組成式 $\ce{C2H4O}$(式量44)。分子量88より $\dfrac{88}{44}=2$ 倍で、分子式は $\ce{C4H8O2}$。
$$U=\dfrac{(2\times4+2)-8}{2}=1$$
答え: 分子式 $\ce{C4H8O2}$、$U=1$。(カルボン酸なら酪酸など、エステルなら問7の4種が候補になる)
【つまずきポイント】組成式の段階で不飽和度を計算してはいけない。必ず分子式に直してから計算する。
問10
分子式 $\ce{C9H11NO2}$ の芳香族アミノ酸Yについて、不飽和度を求め、ベンゼン環以外の不飽和結合の数を答えよ。
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$$U=\dfrac{(2\times9+2+1)-11}{2}=5$$
【着眼点】芳香族なのでベンゼン環で4を消費。残り $5-4=1$。アミノ酸なので $\ce{-COOH}$ の $\ce{C=O}$ でちょうど1を消費。
答え: $U=5$。ベンゼン環以外の不飽和結合は1つ(カルボキシ基の $\ce{C=O}$)。 側鎖はすべて単結合と確定する(Yはフェニルアラニン)。
【つまずきポイント】$\ce{N}$ 入り+芳香族+官能基の3点セットは難関大の定番。「$U$ の内訳を書き出す」(環4+C=O 1=5)と迷子にならない。
よくある間違いTOP3
- O原子を式に入れてしまう。 酸素は水素の最大数に影響しないので無視。
- Nの補正の符号を間違える。 $\ce{N}$ は結合の手が3本なので、挟み込むと $\ce{H}$ の席がむしろ1つ増える。$(2x+2+w)$ のプラス。
- U=1で環状構造を忘れる/U=4でベンゼン環と即断する。 $U$ は「二重結合と環の合計数」。内訳は問題文の条件(芳香族、加水分解、付加反応など)で確定させる。
補足: ハロゲン $\ce{X}$ を含む場合は $\ce{H}$ とみなして数える(例: $\ce{C2H3Cl3}$ は $\ce{H}$ 換算で6個 → $U=0$)。
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